比重選別機【SH型】による
非鉄金属(アルミニュームとマグネシューム)の選別研究
1.研究の目的及び研究の概要
1:調査研究の目的
使用済み自動車リサイクル処理の過程で発生するアルミニューム破砕物中に存するマグネシュームの除去に,比重差を捉え選別が可能か否か確認する。同時に単位処理能力及び設備の設定条件の確認。現状を報告申し上げれば,マグネシュームの混入率は重量比で概ね2%以下程度(正確な調査資料なし)であり,アルミニュームとしての再利用には好ましくなく,その75%以上を除き選別後のアルミニューム中のマグネシューム混入率を0.5%以下とする。
本研究では,同混入率を0.2%以下を目標とします,実際の設備では大量に長期間安定的に選別処理を行う必要があります。長期的には設備の僅かな狂い又は僅かな磨耗等により,選別精度に大きな影響が考えられるからです,更に再現性に相当幅があると考えられます。)
2:調査研究の規模
実機の1/2程度のテスト用機器を使用し実証
3:調査研究の実施場所
上尾市藤波2丁目198番地
原田産業株式会社.実験室
4:調査研究期間
2000年2月1日〜3月10日
5:調査研究作業実施者
原田産業株式会社 開発部、環境システム部
TEL 048-786-5555 FAX 048-786-5554
2.比重差選別機の選別原理
3.検討項目
1:風洞中の原料の動き確認調査(基礎実験:1)
風洞(P.20 図―03)を用い,マグネシュームの浮遊開始時の風速を確認しました。
2:選別デッキの角度及び振動数の把握(基礎実験:2)
実験機SH−02(図―01)を使用し各条件を確認しました。
選別デッキの角度は基本的な角度を探ります,軽量物が極端に多い場合は基本的な角度より傾斜を強 くしながら実証します,今回の場合はその逆の操作を,つまり傾斜を緩い方向で実証する事になります。
3:選別精度,単位時間処理量の確認と選別条件の特定。(実証試験)
実機の50%の処理量を有する実験機SH−10(図―02)使用し,選別精度を優先しその単位時 間処理能力及びその設備設定条件を特定し再現性の確認をしました。
4.実験結果
1: 基礎実験(風洞中の原料の動き確認調査)
(1)確認調査の方法
別紙(24ページ)の通り風洞を制作し、インバータにより、簡易な風量制御を行い、マグネシュームの浮遊状況を観測する。特に形状により浮遊状況が大きく異なると推定しており、かかる点に関して詳細に観察する。
(2)使用原料の選択
時間的な制約等もあり、必要にして十分な大きさのモデルの制作が適わず、原料に関しては可能な限り小さな物を選抜する事とし、概ね20mm〜30mm程度とした。
(3)確認調査の目的
原料のうち軽量物(マグネシューム)が浮遊し始める時点の風速を確認する。【比重差選別における最適な風量設定】
マグネシュームの形状による、浮遊状況の相違に関して観察する、各々風速を確認する。【比重差選別における前処理の検討材料に】
(4)確認調査の結果
別表・表-1-1、表-1-2及び表-2の『風洞内風量のバランス確認実験データ・シート【1】及び【2】』にて報告の通り、下記の状況が確認され、比重差選別における風量の設定に大いに寄与すると思慮するところです。
ア.マグネシュームとアルミニュームのもつ比重差が明確に浮遊開始風速の差を露呈しています、無論形状による差異は無視できるものではないが、傾向として鮮明に認めることができる。【風洞実験写真参照】
イ. 比重差選別機のデッキ面における適切な風速は、6.0m/sec以下が望ましいと考えられる【推定だが5.5m/sec程度が最も適切】。
ウ. 一方、今回の実験機【SH-2】における最大平均風速は4.5m/sec程度と十分な風力は得られない、実証機(SH-10)にて実証したいと考えています。
(5) 今後の課題
ア. 風洞の垂直方向に振動機能をもたせ、比重差選別機と同等の振動を与えた上で原料の観察をすべきと思慮、何故かなれば風の投影面積の相違によりその固体の浮遊開始風速に大きな差異が生じるため一定の時間、時系列で観察する必要を感じている。
イ. 風洞の部位により相当の率で風速の差異が認められる。埼玉大学の機械工学科
流体研究室の川橋教授に知恵を拝借し、航空機の床材【精密なハニカム材】を風洞の整流に使用し、飛躍的な改善をみたが、なおテスト機SH-2程度にしか高まらず、結果として均一な風力には程遠いと言はざるを得ない。次に機会があるようであれば、是非均一な送風機構を開発したいと思慮しています。
2: 基礎実験 (選別デッキの角度及び振動数の把握)
(1) 確認調査の方法
ア. 比重差選別機の選別デッキの基本的な角度の確認。
(10度、13度、14度及び15度にて確認した)
イ.マグネシュームを板状(MGa)、ブロック状(MGb)及び混在させた一般原料(MGc)とし、アルミニュームをエンジン破砕材(ALa)及び車両全体から採取した全体(ALb)とし、各々選別精度を確認した。
ウ. 各確認調査とも選別設備の原料排出口を封鎖し全ての原料がデッキ上 に滞留するように設定し、一定量(6.5Kg〜7.5Kg程度)の原料を選別設備に投入し、稼動後原料の動きに収束が認められた時点で、選別設備を停止し稼動時間と選別状況を確認した。
エ. 各々確認作業は、そのデッキ面を重量物側20%、軽量物側20%及び中間60%に分割し、各々の物性を確認した。(何れも面積比)
オ. 角度変更はマニュアル操作、風力及び振動数変更はインバータによる操作とし、インバータの数値の上限は65Hzとした。
カ.使用する網に関する予備調査を実施した、成形波網3種及び折り網1種を調査し
(p:15mm,h:10mm,t:1.2mm, p:25mm,h:10mm,t:1.2mm、p:35mm,h:15mm,t:1.2mm, #120畳折)結果として成型波網を採択した。(, p:25mm,h:10mm,t:1.2mm)
(2) 使用原料の選択
ア. 一般的な原料を採択した、鉄リサイクル工業会のメンバー企業の数社とヒヤリングを実施し、アルミニューム及びマグネシュームともに概ね20mm程度から40mm程度の大きさの原料の選別が最も多量であり、また選別も困窮を極めている現状が浮き彫りにされたと思慮した。
イ. 実際の原料は、愛知県半田市の豊田メタル株式会社様に2回に渡り150Kg程度わけて戴き今回の調査確認に供した。*.特に油脂及び永久磁石紛等が混入していない事を確認し実施した。
(3) デッキ仕様及び角度確認調査の結果
ア.選別デッキ用網に関して
成形波網を採択し、ピッチに関しては概ね25mm程度が適切と思慮
しました、原料の最大寸法の50%強としました。成形波網上の選別対象物の作動確認。
p:15mmでは、原料が軽量物側に滑る現象が認められました。
p:35mmでは、重量物側への原料の動きが非常に緩慢であることを確認。
p:25mmでは、概ね15mmと35mmの網で起こる傾向が影を潜め望ましい作動を確認。
折り網・#120畳折り上の選別対象物の作動確認デッキの角度を大きく落とすも(10度程度)、原料の動きが非常に緩慢であり、単位時間当りの処理量に問題があると懸念し断念、また調整の幅が非常に狭く、実機に応用する事を念頭に断念。
結果として、ピッチに関しては25mm前後に最適なピッチがあるのだろうと思慮した、更に現場における前処理、後処理及び製品等のリサイクル目的により詳細を結論付ける事としたい。
イ. デッキの角度に関して(p:25mm,h:10mm,t:1.2mm 成形波網を使用)
13度の調整(実験NO−01)
一定の調整を試みた後、風量を最大(65Hz:平均風速4.5m/sec)とし、振動数を落として(48Hz:回転数345rpm)調整を試みる、この回転で原料の動きに緩慢さが明確に認められる。
重量物及び軽量物側に原料重量比は【1.98:0.74】であり、十分に均一な分布は望めなく、基本的な角度ではない事を確認。
*更に大容量の送風機であれば、調整は可能であると考える、角度が小さい程球体又は円柱状原料を意識しないで調整ができる利点がある。
14度の調整(実験NO−03)
振動数(55Hz:393rpm)、風量(65Hz:平均風速4.5m/sec)で一定のバランスが得られ、原料の動きに収束が認められた。つまり角度14度の前後に基本的ななデッキ角度があると推定する。
重量比は軽量物:重量物=【1.11:1,28】
15度の調整(実験NO−02)
球体状及び円柱状の原料のみならずブロック状の原料さえ軽量物側への動きが認められる、一定の調整を試みた後、振動数を最大限(65Hz:回転数465rpm)とし、風量を落として(58Hz:風速4.0m/sec)調整を試みる、この回転で原料の動きに軽量物側へ滑る傾向が明確に認められる、かかる粒度ではこの角度が適正ではないと断定する。
重量比は軽量物:重量物=【1.46:1.08】
3:実証試験(選別精度,単位時間処理量の確認と選別条件の特定)
(1)確認調査の方法
ア.比重差選別機の選別デッキの理想的な角度の確認。
基本的な角度14度を挟み13.7度,14.2度,更にその前後0.5度刻みで確認する。
イ. マグネシュームを板状(MGa)及びブロック状(MGb)原料を混在させた一般原料(MGc)とした原料で選別精度を確認した。
ウ.各確認調査とも選別設備の、一定量(119.6Kg程度)の原料を選別設備に投入し、原料の投入が終了した時点で、選別設備を停止し稼動時間と選別状況を確認した。
エ. 各々確認作業は、軽量物側及び重量物側に取り出した選別後の原料を仕分けし重量計測し写真撮影をし、各々の物性を確認した。(何れも重量比)
オ. 角度変更はマニュアル操作、風力及び振動数変更はインバータによる操作とし、インバータの数値の上限は65Hzとした。
カ. 使用機器、選別機:SH-10,ブロアー2基,投入コンベアー2基,定量供給コンベアー1基及び制御盤(各インバータ込み)。
キ. 使用する網に関しては基礎実験Uにより p:25mm,h:10mm,t:1.2mm、の成型波網を採択した。
ク. 比重選別実証試験に共通:アゥミニューム99%(1180Kg)+マグネシューム(1.2Kg) を混入した物を原料とした、マグネシュームのみ黄色にペイントした。
ケ. 選別設備を立ち上げて原料を選別デッキの中央に手投入し原料の投入が終了するまで詳細に観察した。
コ. 使用計測機器:角度計、時計、秤、回転計、風速計測器。
(2) 使用原料の選択
実際の原料は、愛知県半田市の豊田メタル株式会社様に2回に渡り150Kg程度わけて戴き今回の調査確認に供した。
*. 特に油脂及び永久磁石紛等が混入していない事を確認し実施した。
(3): 比重差選別実証試験
ア.比重差選別実証試験:デッキ角度13.7度【NO16~18】
デッキ振動数:372rpm
平均風速 :5.5m/sec
稼動時間 :256sec~372
精度の確認:重量物側88.5% マグネシューム130g〜210g 0.12%〜0.20% 総量105Kg〜109Kg 軽量物側2.5% マグネシューム320g~580g 26.7%〜48.3% 総量1.620Kg〜3.450Kg
参考:処理能力と精度【マグネシューム混入率】
いずれの場合も十分に精度は確保できるものと考えられますが、軽量物側へのアルミニュームが多いと思慮します、精度と単位処理量は、各々望まれる妥協点により設定することが可能です。
イ. 比重差選別実証試験:デッキ角度13.2度【NO19〜21】
デッキ振動数:372rpm
平均風速 :5.5m/sec
稼動時間 :241sec~358
精度の確認:重量物側88.5% マグネシューム600g〜90g 0.05%〜0.08% 総量106Kg〜110Kg
軽量物側2.5% マグネシューム370g~710g 30.8%〜59.2% 総量560g〜1.68Kg
参考:処理能力と精度【マグネシューム混入率】
いずれの場合も十分に精度は確保できるものと考えられますが、軽量物側へのアルミニュームの量も重量比1%以下に抑える事が十分可能です、精度と単位処理量は、各々望まれる妥協点により設定することが可能です。
ウ. 比重差選別実証試験:デッキ角度12.7度【NO22〜24】
デッキ振動数:360rpm
平均風速 :5.5m/sec
稼動時間 :245sec~362sec
精度の確認: 重量物側88.5% マグネシューム150g〜190g 0.14%〜0.17% 総量110Kg〜111Kg 軽量物側2.5% マグネシューム30g~60g 2.5%〜5.0% 総量170g〜420g
いずれの場合も十分に精度は確保できるものと考えられますが、デッキ上にマグネシュームが滞留していました、更に処理が進むにつれ精度への影響だ懸念されます、精度と単位処理量は。
参考:デッキ角度による精度【マグネシューム混入率】
各デッキ角度における選別精度比較。精度は,アルミニューム製品側へのマグネシューム混入率を表示しています(重量比)。
参考:デッキ角度によるアルミニュウーム歩留り比較
各デッキ角度における歩留り比較,歩留り率は百分率表示です。12.7度の場合は、軽量物側への原料の流れが滞留していると確認しています。
*この場合の歩留りとは,処理された軽量物及び重量物中のアルミニュームを分母として重量物中のアルミニュームの比率を歩留りと定義いたします。
参考:再現性の確認【デッキ角度:13.2度,単位処理量:1.4t/h】
重量物側のアルミニューム中のマグネシューム混入率(単位はグラムです)比較。重量比:0.04%〜0.08%。再現性も幅はありますが明確に認められます。
5: 結論
1.基礎実験及び実証試験の結果から,選別に最適な操作条件は下記の通りである事が認識された。
比重差選別機(SH-10)のデッキ角度: 13.2度程度
同デッキ上の風速 : 5.5m/sec程度
同デッキの振動数 : 372rpm程度
2.掲記の条件での単位処理能力及び選別製度は,SH-10で下記の通りであった。
単位処理能力:1,400Kg/h程度
選別精度:0.5%〜0.8%程度
歩留り:99%以上
3.比重差選別機SH−10を倍にスケールアップした実機では,単位処理能力が2.8t/hとなり,導入コスト(概算)は下記の通りです。
導入時コスト:30,000,000円
比重差選別機本体 1式
集塵設備 1式
施工及び調整費用等
ランニングコスト(年間): 1,500,000円(人的コストは除く)
4.問題点
*デッキの形状の研究が必須であると思慮、ピッチ、高さ及びパンチ孔径等々最適とは言い難く、今後の研究にかかっていると考えています。
*粒度、20mm以下はどうか、40mm以上はどうか十分な時間を戴き実験する必要を感じている。
*異種金属が混入した場合はどうか。
*汚れ、油脂及び永久磁石紛が付着している場合はいかがか、次の機会があれば、実験により確認したい。
*デッキの角度は13.2度前後が望ましいと考えていますが、この角度における他の条件を詳細に実証する必要があると思慮いたします、同時に再現性を十分に確認する事が肝心と考えています。
5.非鉄金属選別の可能性
* 今回の実験に使用した原料は、実際にリサイクル処理をされている業者の関係者より提供戴きました【無論、一切の条件は申し上げませんでした】、原料の物性は次の通り
《物性》:マグネシューム及びアルミニュームとも
粒度: 20mm〜40mmの篩を使用したもの
塵の付着: 軽度
油脂の付着: 軽度
永久磁石紛: 認められず
AL及びMG: それ以外の金属は認められず
以上の物性で実験を実施した訳ですが、結果は概ね良好であり選別の可能性を大きく広げたと思慮いたします。
* 現実には処理される業者により、排出される原料の物性は思いの外大きな差異があると考えられる、したがって掲記の物性で可能であっても直ちに選別が可能であるとは言い難く、今後の調査にかかっている。
* 単位処理能力に関しても実用レベルにあり【推定:2.8トン/時間 SH-25型比重差選別機】一定の条件のもとで、マグネシュームとアルミニュームの選別は可能であると結んで報告申し上げます。
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